民青研究のすすめ
民青研究のすすめ
近年、多くの人が「共産趣味」を楽しむようになりました。当時のヘルメットやビラを収集する人、左翼党派の歴史を調べる人、出版物を買いあさる人、実際に接触してみる人、海外の共産趣味も含めて、ネット上にはたくさんの共産趣味者がみられるようになりました。
しかし、多くの人がニセ「左翼」暴力集団…いえ新左翼党派ばかりに関心を持ち、民青はマイナージャンルで、その実態を知る人は残念ながらとても少ないです。この記事は、民青研究の面白さを、私が収集した書籍のコレクションも交えながら紹介するものです。
【①入門編】
まず、民青を簡単に説明しましょう。
正式名称は日本民主青年同盟と言い、1923年に日本共産青年同盟(共青)として設立される。戦前から現在に至るまで、日本の学生運動・青年運動の組織としては最大規模を誇り、最盛期には20万人、現在でも1万人の同盟員を有する。同盟員が先頭に立って組織した学生運動組織である全学連は、1977年に日本の学生の半数近い100万人にまで達した。このスケールの大きさは、新左翼党派では味わうことはできないし、この重厚感が香ばしい。運動面では民主主義・平和・国民の生活向上を目指すとともに、思想面ではマルクス、エンゲルス、レーニンの名を挙げて科学的社会主義(昔で言うマルクス=レーニン主義)を学ぶことを目的としている。日本共産党との関係は、ソ連共産党とコムソモールの関係を模倣したもので、現在は「相談相手」と明記されている。
そして趣味者におすすめ(したい)の入門書はこちら。
日本民主青年同盟中央委員会『日本民主青年同盟の70年』(1996年)
民青のなりたちや歴史の全体像をつかむのに最適の書籍。しかしながら、発売から23年がたっており、民主書店でも扱われず、残る在庫を内々で販売しているだけ。古書店で入手するか、民青から直接購入する以外には方法はないが、入門としては最適なので、入手できそうなら一番におすすめする…したい書籍である。
日本民主青年同盟中央委員会『写真集 青年同盟65年のあゆみ』(1988年)
視覚的に民青の姿をイメージしやすく、香ばしい写真もたくさんあるので、こちらも初心者におすすめしたい書籍。付録の機関紙復刻版や巻末の年表も見物。これも絶版だが、古書通販サイトの「日本の古本屋」で見かけることがある。
【②戦前編】
民青は1923年に日本共産青年同盟(共青)として結成され、戦前の治安維持法下での活動は、常に死と隣り合わせだった。(治安維持法成立以前でさえ!)初代委員長の川合義虎は、結成5ヶ月後の関東大震災で救助活動中に警察が拘束し、20代前後の10人の仲間とともに虐殺された。射殺直前に「日本革命万歳!労働者万歳!日本共産党万歳!」と叫んだとされる。治安維持法の犠牲となった10万人の逮捕者と1700人の奪われた命の中には、多くの共青同盟員が含まれていた。
そんな困難な中でも運動は力強くすすめられ、日本労働組合評議会(労働運動)、全日本農民組合(小作争議)、全国水平社青年同盟(部落解放運動)、学生社会科学連合会(学生運動)で中心的な役割を果たしたのが彼らである。共青の合法組織である全日本無産青年同盟は、1万人をこえる青年を組織し、機関紙は、週5日刊の3色刷りで数万部に達した。特に学生運動の勃興は目覚ましく、学生社会科学連合会(学連)が全国の大学で学園闘争を巻き起こす。京大滝川事件では、全学生7000人中5000人が反対集会に結集した。のちの全学連は、この学連の系譜を引くもので、自らの歴史の一部と位置付けていた。
また特質すべきは軍隊の中での運動で、陸軍では連隊ごとに、海軍では艦ごとに細胞(支部のこと)が結成され、盛んに反戦運動がなされた。特に、陸奥、長門の両戦艦や陸軍士官学校では、多くの共青同盟員がいたことが戦後になって分かっている。
戦前の共青について調べたい人におすすめしたい書籍はこちら!
塚田大願『共産青年同盟の歴史―青年運動のかがやく伝統―』日本青年出版社(1968)
戦前の共青の最後の委員長だった塚田大願が獄中で生き延び、戦後になって共青の歴史をまとめたもの。組織の壊滅と再建をひたすら繰り返す並々ならぬ苦闘が一冊の新書にまとめられている。スポーツから機関紙までジャンル別にまとめられた運動分野の多彩さがポイント。
日本民主青年同盟中央委員会出版事業部『物語青年運動史―戦前編―』日本青年出版社(1967)
こちらは、戦前に共青で活動した人たちから直接話を聞き取ったオーラルヒストリー。総勢15人が自分の経験したことをそれぞれ語ります。ちなみに、これらを発行している青年出版社は、民青専属の出版社でした。(解散済)
田中悠・志位和夫『共青創立90周年記念講演会』日本民主青年同盟中央委員会(2013)
創立90周年を記念して行われた民青同盟の田中悠委員長と日本共産党の志位和夫委員長の講演内容をまとめた小冊子。新入同盟員向けの内容で、半分ほどを共青について割いている。
戦前編についてはこちらを参考にしてください
次回紹介目次(予定)
③学生運動編
④新日和見主義事件編
⑤出版物編
⑥究極の民青研究とは?